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2011  11:30:47

二匹の狼

原書:Buddha's Brain: The Practical Neuroscience of Happiness, Love, and Wisdom
訳書:ブッダの脳 心と脳を変え人生を変える実践的瞑想の科学

人間の内には愛の狼と憎しみの狼が住んでいて、毎日、どちらの狼にえさを与えるかでその人の人格が決まってくる、ということをアメリカン・インディアンの長老が言っているそうです。

わたしたちの祖先は、外界の危険や過酷な天候のなかで生存していくために部落を作ったのですが、これが、共同意識(部落意識)と敵意を生み出しました。脳が、敵と味方の区別をするようになった。民族、宗教、意見の違いで、相手を「わたしたち(Us)」の輪の外に置くとき、脳は自動的にその相手を低く評価して、ぞんざいに扱ってもよいと判断するそうです。

こうして、脳はいつも、相手が「Us」に入るのかどうかを判断しています。自分が、誰かを「彼ら(Them)」のカテゴリーに入れていないかどうかに注意し、そうした場合、意識して相手との違いを頭から放ち、その人との共通点に焦点を当てるようになさい、と提言しています。

映画のヒーローが悪党をやっつけるのを見て気分がスカッとする、というのも憎しみの狼が内在している証拠。テロや殺戮のニュースを聞けば、どうしてそんなことができるのだろうかと思うが、彼らとてわたしたちと同じDNAを持っている。こうした敵意が内にあることに、まず気づくこと。

憎しみの狼が内在するのは、わたしたちの責任ではありません。あくまで、サバイバルの過程で生まれたものだから。危険の信号に、憎しみの狼がうなり声をあげるのです。けれども、このプロセスを理解しておくと、感情に流されず、憎しみの狼が動き始めたのだと気がつくようになります。

大抵の場合、憎しみの狼が動いて関係にダメージを与えても、愛の狼の方が大きくて強力なので、関係を修復しようとする。憎しみの狼を押し殺そうとするのは逆効果なので、その独善、反感、侮蔑、偏見といった偏狭性を観察して手なづけ、愛の狼を育てていくようにする。

なかなか面白いと思いませんか? UsかThemかの判断を知らず知らずのうちにやっているのかなぁ、と改めて考えさせられました。違いではなくて、共通点を探し出していくということが愛の狼を育てることになるんですね。

他の章では思いやりということで、感情移入を一つの徳として勧めていますが、それは、たとえば、相手に不満を感じたりしたとき、ちょっと間をおいて、相手がどう感じているかを考えようとする。そうすると、前頭前皮質が活性化されて、意図したことに意識が集中され、感情移入の神経系が作動します。

この感情移入は、相手に自分が動かされることを受け入れる、生まれながらに持つ寛容さだと言っています。ところが、相手と衝突しているとき、すぐにこれが引っ込んでしまう。そして、長期的な関係では、徐々に引っ込んでしまうことが多い。まあ、そうですね。最初のころは、相手の身になって考えても、気をつけないと、相手のことなんかだんだん考えなくなる、というのはよくあるのじゃないかしら。

この感情移入の1つの方法として、相手の動作を観察し、自分の体でそれがどう感じられるか感じてみる、というのは面白いなと思いました。今度、試してみようと思います。

それから、相手の行為にかかわらず、相手を思いやり、どうか苦しまないでくださいと祈ってあげる。そうすると気分がよいし、罪悪感や後悔から解放されて、相手の態度にコントロールされず、精神衛生が保てる。あと細々したアドバイスがあるのですが、いずれも、相手に振り回されないで(つまり、見返りを期待しないで)、善意をもって行動する。それでも良好な関係にならなければ、相手とのコンタクトを最小限にとどめる。

相手にお構いなしで善意ある行動をする、というのは、ずいぶん徳が高いようで、凡人にはとてもできない、なんて思ってしまいますが、でも、これは自分の精神衛生のためだと思えばいいんだと、目からうろこでした。



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