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2014  06:00:35

英語で読む推理小説のお薦め|精神哲学も学べる元チベット僧探偵のジャーニー



かなり前にご紹介した"The First Rule of Ten""The First Rule Of Ten"という推理小説の続編です。一言ですごく面白かったです。

わたしは、もともと推理小説が好きで昔はよく読んでいたのですが、小説によってはかなりダークで後味が悪かったりするのでずっとご無沙汰になっていました。でも本書は、著者が著名な心理学者で男女関係やPersonal Growthの分野で一目置かれているGay Hendricksですから、単なる推理小説で終わっていません。

Gay Hendricksは、こちらにある「ユー・キャン・ヒール・ユア・ライフ」のビデオに登場しています。

もちろん、殺人事件を解決する謎解きも楽しめますし、共著者のTinker Lindseyがハリウッド映画の脚本家だからでしょう、このまま映画にしてもいいんじゃないという具合にまとまっていて、読み終わったあとは、映画を見終わった後のような爽快さがありました。

映画化するなら、主人公のTenことTenzing Norbu役は、キアヌ・リーブスがいいでしょうね。Tenは、チベット人の父とアメリカ人の母を持つハーフですから。さて、舞台はロサンジェルスで、ローカルな地名も出てきて、4ヶ月ほど住んだことがあるので懐かしいです。

Tenは元チベット僧ですが、Billとの友人関係が気まずくなったときは悩みますし、新しい恋愛対象が現れても最初は過去に引きずられて不安を感じたりというごく普通の経験をします。

また彼の生い立ちが少し複雑で、両親、特に父親との関係がうまくいっていません。

父親はチベットの高僧で、頭がよく、野心があります。自分の娘でも可笑しくない年頃のTenの母親と知り合い、Tenが生まれるわけですが、自分は高僧になるべく修行をしているので、これは不都合なこと。それでTenは幼少のころ母親とフランスのパリに移りそこで生活します。自由奔放で生き生きしていた母親が、お酒やドラッグに溺れ、やがて若くして亡くなり、その後に父親の元に引き取られてといういきさつがあります。

父親にとってTenの存在は自分の過去の過ちを思い起こさせるからでしょう、Tenに対して愛情のこもる言葉をかけることはありませんでした。Tenは、肉親的な愛情を父親から受けず、冷酷な父親からいつも批判されているような気がするし、母親を死にいたらしめたという怒りや恨みも持っています。

そんな感じで、読者はTenの葛藤を知り、それがTenの思い込みを作り上げ、ひいては周囲の人間関係(友人や恋愛相手)に及ぼす影響を第三者の目から観察する場を与えられます。

さすがGay Hendricksです。ストーリとして読みながら主人公に感情移入する楽しみの他に、精神分析まで勉強できてしまいます。それプラス推理小説の面白みがあり、映画のようなアクションシーンもありで幾通りにでも楽しめる小説でした。

それに、Tenと周囲の人とのやりとりがユーモアがあり、本当に映画を楽しんでいる気分になりますが、さらに、この表現使えるなんていうのもありましたよ。今回の事件はハリウッド映画界の有名プロデューサーが殺されるという設定で、パパラッチに悩まされるLAPD、ビバリーヒルズの豪邸の様子など、ああ、ロサンジェルスって感じでしたね。

会話で面白いと思ったところを少し拾ってみます。

被害者の妻に聞き込みに行くとき、BillがTenに来ないかと誘います。(Tenは昔LAPDに在籍していたことがあり、Billはそのときのパートナーでした。現在、Billは昇格して部下を抱える地位にいます。ただ2人の部下があまり仕事ができない。だからTenに応援を頼んだりするんですね)。

Bill: "Why don't you come? I could use an extra shoulder for her to lean on. Yours seems to work particularly well in these situations."
Ten: "What, you mean next-of-kin situations?"
Bill: "Nope. Needy woman situations."


Billがこういう状況に対応するのにTenが上手だからと言うと、Tenがそれどういう意味、親族を扱う状況に?と疑問を投げかければ、Billは愛情に飢えた女性を扱う状況だとかわします。Tenがシングルなのでからかっているんです。

使えると思った表現はこちら。TenがHeatherと初めてのデート中に電話にメッセージが入り、次の場所に行かなければいけないときHeatherが使った言葉。

"You have to get going," Heather said. I nodded. "To be continued?" She said.

このHeatherの台詞はうまいと思いました。Tenの状況を理解し罪悪感を与えずに行かせてあげるけど、Tenのことが気に入ったから、"To be continued?" と意思表示はするけどプレッシャーを与えていません。

それからTenはときおり、状況に応じて、昔のメンターの言葉を思い出します。こんな具合に:

No, no, Lama Tensing! Do not resist spacious confusion. Do not judge. Pure not-knowing is a good thing; it is one breath away from the void itself, the nonplace from which all reality is manifested.

これは、どう判断してよいか分からない状況に遭遇したときに思い出した言葉です。

まったく分からないということは良いことだそうです。それは、あらゆることが顕現される「空」の状態の一つ手前のところ。だから、抵抗せずに任せっきりの気持ちになり、頭で判断しないこと、なんですね。

瞑想や明晰夢のことも学べます。

またクライアントのJuliasの言葉も示唆深いものです。彼は、恐れによって事を始めるとろくなことはないという教訓を学んでいます。

Never start anything fueled by fear.

Tenが父親に対する恨みを放つのを決心したことが、次の文から分かりました。これは、自分の今経験していることと少しオーバーラップするので、特に胸に染み入りました。

Somewhere out there, in a small bed, in a cold room, a man was dying.
Seven thousand miles away, another man--a man, not a boy--was grieving the father he never had.
What do we inherit? Sometimes, it's up to us to decide.

父親に対しての恨みは、こうあって欲しいという父親を持つことができなかったことを悲しむ気持ちの裏返しです。それを恨みのまま受け継ぐか、人間として強くなる経験を与えられたとするかは、自分の選択だということだと思います。
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